地球規模の環境変化や急激な少子高齢化による社会構造変化が進む中、次世代の電子デバイスには、更なる利便性と環境制約を鑑みた多様性が求められています。こうした背景の中、容易で安価、環境負荷が小さい製造プロセスや機械的柔軟性といった魅力を有する有機半導体材料への期待が高まっています。

本研究分野では、デバイス機能の源となる新たな有機半導体表面・界面の開発とそこでの電子伝導現象をベースとした物質科学研究、また、その結果を有機エレクトロニクス産業に結び付ける応用開発研究を多角的に展開しています。

  1. 先進的な高性能有機デバイス及びマトリクスアレイの開発
  2. 高性能有機半導体トランジスタのキャリア伝導機構の解明
  3. 有機へテロ接合界面における電子伝導層の形成と新規二次元電子層の創出
  4. 新規有機半導体材料の合成と機能発現


1. 先進的な高性能有機デバイス及びマトリクスアレイの開発

塗布型有機トランジスタの開発

塗布型有機トランジスタマトリクスアレイ

有機半導体材料は、溶液からの塗布によって薄膜が形成可能であるため、従来の無機半導体材料を用いた場合に比べ、低コスト・低環境負荷の電子デバイス作製が可能であると期待されています。

当研究室では、結晶性の高い有機半導体薄膜を形成するための独自の塗布法を開発し、従来の常識を打ち破る高い電子伝導性能を実現する塗布型有機トランジスタの開発に成功しています。現在、新規塗布プロセス開発、材料開発など、更なるデバイス性能向上のための研究に取り組んでいます。


三次元有機トランジスタの開発

三次元有機トランジスタ

有機半導体材料を用いた電子デバイスは、室温近傍での製造プロセスが可能であるため、プラスチックや紙などを基板とした軽量・フレキシブルな電子デバイスの作製に適しています。

当研究室では、大型・高精細なフレキシブル有機ELディスプレイの駆動に必要な、大電流出力・高速動作を実現する三次元有機トランジスタの開発に成功しています。現在、この三次元有機トランジスタを利用したディスプレイパネルの開発や、高速動作が可能な有機論理回路素子の開発研究を行っています。


アクティブマトリクス・高速スイッチング回路の開発

アクティブマトリクス型パネル

現在、有機トランジスタの性能はa-Si TFTの性能を上回り、今後の研究開発によって更なる高性能化が期待されています。

当研究室では、有機トランジスタの極限性能を追求すると共に、有機トランジスタを用いたエレクトロニクス製品の要素技術開発を行っています。例として、フレキシブルディスプレイ、電子ペーパー、大面積センサパネルなど、高性能な有機トランジスタが活躍できるエレクトロニクス分野の開拓に努めています。